おいしい記憶帳

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駅前食堂の記憶

東北地方の駅前食堂を取材して回った――まさにその名も『駅前食堂』という本を読んだことがある。古本屋の片隅で偶然見つけた一冊だった。表紙には少し色あせた駅舎と、暖簾のかかった小さな食堂の写真。その素朴な佇まいに惹かれて手に取ったのがきっかけだ...
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満腹と反省のあいだ

先日の健康診断で、少しうれしいことがあった。体重が昨年よりマイナス4キロ、腹囲がマイナス4センチ。誤差と呼ぶにはあまりに立派な成果で、「やればできるじゃない」と心の中で自分を褒めた。思い返せば、特別な努力をしていたわけではない。ただ、間食を...
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ごはんの行方

朝炊いたご飯が思いのほか残ってしまうことがある。そんなとき、私はいつも小さな決断を迫られる。「冷凍しておくか、それとも今日のうちに使い切るか」。ラップで包んで冷凍庫へ入れておくのももちろん悪くない。次に「ごはん足りない!」という日が来たとき...
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休業日のホットドッグ

日曜日の夜、そのイタリアンのお店はいつもとは少し違う表情をしている。普段はパスタや前菜、ワインが静かに並ぶ店だ。けれど、日曜の休業日だけは特別。音楽のイベントやちょっとしたライブが開かれることがあり、そのときだけ限定で登場する“幻のホットド...
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鰻、そして空腹の夜に

少し前までの私は、「鰻といえば〇〇だよね」と、さも通ぶったような言い方をしていた。“名のある店で食べるのが一番”と信じて疑わなかったのだ。老舗の暖簾をくぐり、炭火の香りに包まれながら、ふっくらとした身に箸を入れる――その特別感こそが、鰻を食...
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秋田の名産

実家がある秋田を離れて暮らしてから、もうずいぶん長い時間が経った。気がつけば、四季の移ろいを仙台で感じるようになって久しい。ただ、心のどこかではいつも「秋田の空」を思い浮かべている自分がいる。どこまでも広く大きな空、日本海、日本海に沈む夕日...
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湯気の向こうに、台湾の記憶

昨日は、思いがけない涼しさに肩をすくめるような朝だった。なかなかベッドから起き上がれず、ふと台湾・松山で撮った割包屋さんの店先の写真を見返し、湯気が立ちのぼる屋台の風景と、あの白くふわふわした蒸しパンの感触。まるで、遠い日の空気が一瞬だけ戻...